この物語はうみねのこなく頃に本編とはまったく別のカケラ世界の物語です、独自解釈キャラやオリジナルキャラも登場します。


ベアトリーチェの庭園物語 動きだす魔王、その時ベアト達は?編    

「……『ベアトリーチェの庭園』か、成程なこれは面白い所だ」
 謁見の間で部下に調べさせたベアトの庭園の報告書を見ていたバアルがそう呟くのを聞いたフェリオンが嫌な予感を覚えるのはバアルのその口元が愉快そうに歪んでいたからだ。
 「……まあ、平和で穏やかで賑やかな場所ではありますがね。 別に大将が攻め入る様な価値のある場所でもないと思いますけど?」
 フェリオン自身も何度か訪れた事がある場所だ、外界のごたごたから切り離され魔女も人も気ままに楽しく生きている一種の楽園のような印象を彼は感じていた。
 「確かに我が脅威になるでも攻め落とし我が領土とする程の価値があるでもないがな、それでもあのエターナルと関わるとなればそうとも言えんなフェリオンよ」
 ベアトの庭園を守りたければ自分の配下となれとエターナルに言うつもりだろうかとフェリオンは考える、実際バアル軍が本気になればその圧倒的物量の前ではエターナル一人で守り切れるものではないだろう。
 「……バアル様がそこまでエターナルに拘るとはね……」
 「くっくっくっくっく、拒まれれば意地でも我がものとしたくもなろう? そう言うものだ」
 部下にならなかった場合には殺せとヴァサーゴに命じたバアルだったがそのヴァサーゴを倒してみせたエターナルの戦闘力に更に興味をもったようだった、現に仇を討ちたいというヴァサーゴの弟のアシュタロンの願いは却下している。
 「あれだけの力を持ちながらただ毎日をのんびりと過ごしているなどと私にには理解出来んがな、あれだけの力があってまったく野心も何も持たないなどとな……自ら何かするでないなら私がその力を有効活用してやろうと言うだけの事だ」
 「…………」
 本気になったエターナルの力というものがどの程度のものなのかはフェリオンでも予測がつきにくいがそれでもバアルに対抗出来るだけの領域ではあるだろう、その意味では確かにベアトの庭園でのんびりしてていい立場ではない、力あるものには相応の責務と言うものがある。
 「……ふむ? お前は気にいらんかフェリオン、お前が仮契約している離操刻夢の姉と同僚になるということだぞ? 悪い話ではないと思うがな?」
 「……俺の今の地位が脅かされては堪りませんがね?」
 刻夢の名前に内心どきりとしたフェリオンはそれを悟られないようとっさにそう言ってみせた、こちらのカケラではまだ刻夢それ程特別な関係というわけではないにも関わらずこういう言い方をするというのはやはりとは油断のならない主だと思う。   
 (……さてと、何にしても俺はどうしたものやらってとこだな……)


 「だから兄さんに近付くんじゃないわぁぁぁぁああああああああああああああああっっっ!!!!」
 「ええいっ!! 鬱陶しいブラコンの魔女めがぁぁあああああああっっっ!!!!」
 平穏なベアトリーチェの庭園に響くのはブラコン……ではなく反魂の魔女エンジェと庭園の主であるベアトリーチェだった、【天使の双刃】を力任せに振りまわすエンジェに対しベアトはひらりとそれをかわしながら牽制程度な光弾を撃ち込んでいく。
 「おっほっほっほ〜〜〜〜!!! とにかく暇だからあんたらをギャフンと言わせて来いという我が主の指令を……って、ぎょえぇぇぇええええええええええっっっ!!!?」
 運悪く二人の間に入ってしまった蒼いツインテール少女に魔法弾が命中し【天使の双刃】でザクザクと切りつけられあっという間にボロボロ状態となったがそれを気に留める者はいなかったのである。
 「……ま、いつもの光景だね〜〜〜♪」
 「あはははは……そうだね……」
 楽しそうに笑うエターナに苦笑しつつ答えるのはエターナル、今日はめずらしく二人揃って庭園に来ていたのだ。
 「お嬢様とエンジェ様のケンカも最早愉快な見世物と言う感じですな、ぷっくっくっくっく」
 「…………まったく、笑いごとではありませんよ……」
 白いテーブルで緑茶を飲んでいるワルギリアの傍らでロノウェが笑いながらエターナ達の紅茶を用意すると席に着くよう促した、ちなみに戦人はもう何も言う気力もないという様子でテーブルに突っ伏している。
 「……それで今日のケンカの原因は何〜〜?」
 「それがですねエターナ様……」
 ロノウェの説明によると、今日はエンジェと戦人とワルギリアにベアトでお茶会をしていたのはいいのだが戦人の口に周りについたクッキーのカスをベアトがハンカチで拭こうとしたためエンジェがそれを妨害しようとし現在に至るとの事だった。
 「……ケンカするほど仲が良いとは言うけどこの二人の場合はどうなんだろうね?」
 「さあねぇ……まあ、あなたとセツナみたいなものだと思うわよエターナ?」
 「……むぅ!? あたしとセツナは別に仲良くないもんっ!!」
 ムスッと拗ねた様な顔をエターナルに向けるエターナを彼女はどこか懐かしげに眺めた、エターナの顔は子供の頃の自分の顔なのだがこの頃はこうして素直に怒り笑いといった感情を表現していたのだ。
 「成程、それは良い例えですねエターナル」
 「……ふむ? 確かにそうですな、ぷっくっくっくっく」
 「むか〜〜〜!!! あんたらもそう言うかぁぁぁああああああああっ!!!!」
 ワルギリアとロノウェも揃って笑い出すのでエターナは両手をぶんぶんと振りまわしながら怒りだすその仕草は可愛いものでもっとからかいたくもなるがエターナの場合はそろそろ【スターバスター】あたりを撃ち出しそうなのでこれ以上は何も言わないワリギリア達であった。
 今日も今日とてベアトリーチェの庭園には笑い声の絶えない平穏な時間が過ぎていくのだった。


  
 「……あら? いっらしゃいませフェリオンさん」
 「……何でお前がいるんだエクシア?」
 離操刻夢の屋敷を訪れたフェリオンを玄関で出迎えたのはセツナ・プトレマイオスのメイドであるエクシアだった、セツナと遊びに来ていたとも考えられなくもないが玄関まで客を出迎えるというのは少々おかしい。
 「ええ、十夜さんに頼まれましてセツナ様とご一緒にこの屋敷にしばらく滞在する事になりました」
 「十夜だと?」
 一瞬顔をしかめたフェリオンだがすぐにその意味を理解した。
 現在バアルがエターナルを狙っているのは彼らも知っている、そしてそのために彼女の妹の刻夢も狙われないとは限らない、刻夢の守護はフェリオンの役目ではあるが彼はバアルの部下でありいつ敵になってもおかしくないとの十夜の判断だろう。
 「ご理解して頂けたようですね? 刻夢さんとセツナ様には最近フェリオンさんが忙しく私に護衛を頼んだとしております」
 フェリオンの表情からそれを察したのだろうエクシアはにっこりと笑いながら言う、殺気というものはないがその穏やかな物腰の裏で油断なく警戒しているのが分かる。
 「……ちっ、”こっちの十夜”は戦闘力はまだまだでも切れ者なのはどこの”十夜”も一緒ってわけか……ま、仕方ねえがな」
 「私としてもできればあなたとは戦いたくありませんが……しかし、セツナ様のご友人を守るとなれば全力であなたを迎え撃ちましょう、もちろんそうならないよう願ってはおりますよ?」
 エクシアは形式的にはプトレマイオス家に雇われた家具であるがその忠誠はあくまでセツナ一人に捧げられている、それゆえセツナと彼女が守りたいと願うものを守るためなら例えプトレマイオス家そのものを敵にすることでさえ一点の迷いも持たないだろう。
 一方のフェリオンは刻夢の保護者を自称しながらバアル軍の一員であるという立場との間で揺れていて己がどう行動すべきかすら決めかねている。
 「……俺だってそうだがな、だが”どっかの俺”と違って俺は刻夢のためにバアル軍の騎士って立場を放棄出来る程ふっきれも出来ねえよ……」
 今回の件は直接刻無に害は及ばないしエターナルは姉とはいえ別のカケラの存在であるがそんな事は関係ないだろう、姉が不幸になれば妹の刻夢が悲しむのは必至だ。
 「……エクシアさんお客さんですか……って、フェリオンさん?」
 「……あ、フェリオンのおじ様」
 その時にやって来た刻夢とセツナがフェリオンの姿を見て驚いた顔をした。
 「あ、フェリオンさんは何とか時間を作って少し様子を見に来られたんですよセツナ様に刻夢」
 「……あ、ああ……大丈夫とは思うがちょっと気になったんでな」
 「もう! 私だって子供じゃないんですよフェリオンさん!……って言うか、いくらフェリオンさんが騎士団の任務で忙しいからってエクシアさんに警護を頼まなくったっていいじゃないですか!」
 子供扱いされたと思った刻夢は少しむくれた顔をした、もっともこのカケラではオーキッドとの戦いを経験していない彼女はフェリオンから見ればまだまだ危なっかしい子供のレベルであるのも事実なのだが。
 「そう言うなって……こっちは今少し物騒でな、用心に越したことはないってやつだ」
 「……物騒?」
 「……あ、いや……お前には直接は関係ない……だが仮とはいえ俺の主であるお前に、もしかしたら飛び火するかも知れってだけの事だ」
 「はぁ……そうなんですか……?」
 あながち間違いとは言えないが、しかしすらすらと嘘を吐けるものだと自分に対し多少呆れる。
 もともとはこの離操刻夢を殺害する任務で訪れたこの屋敷でフェリオンが彼女の命を助け主従の仮契約まで結んだのはちょっとした気まぐれだったと思う、しかしいつしかこの純粋で真っ直ぐな少女を本気で守りたいと思う様になったのは一種の親心だろうと思っていた。
 このカケラではオーキッドとの命を賭すような激戦lこそなかったがいくつもの小さな事件や騒動を刻夢と共に解決していけばそんな感情も持つだろうと自分で納得している、別のカケラの自分のように情熱的な愛へと発展はしなくても平和な中に時に起こる事件を解決し穏やかな時間を過ごすのを悪くないと思うのは少々戦場での命のやり取りに飽いてきたのだろうと思う。
 黒狼と恐れられる自分がと苦笑しつつも、それが今の、このカケラのフェリオンであるというのは嘘いつわりのない事実なのだ。
 

 「……アシュタロンよ、エターナルの抹殺は許可出来ぬがお前に出撃命令を与える。 ベアトリーチェの庭園に向かい軽く挨拶をして来い」
 「……挨拶…ですか……?」
 謁見の間でバアルからそう命令を受けたアシュタロンは怪訝な顔をした。 まあ、そういう反応だろうとはバアルも予想していた。
 「うむ、エターナルとベアトリーチェには手を出してはならぬが他はどうしても構わないぞ?」
 自分のいた世界から排除され他のどのカケラ世界にも定住出来なかったエターナルがこのカケラに留まれるのはベアトリーチェの庭園が原因であるとバアルは見ているからその庭園の主である魔女ベアトリーチェを殺し庭園そのものを失わせるのは得策でないと考えている。
 「……成程、その任務必ず遂行して見せましょうバアル様」
 「うむ、フロスト騎士団の出撃を許可する、準備が整いしだい出撃せよ!」
 「はっ!」
 先程まで不満気な表情だったにやりとアシュタロンは笑みを浮かべる、ヴァサーゴの仇であるエターナルの大事な者達を殺すというのが愉快だと思っているのだろう。
 
 
 
 「……まったく、あんたも祭具殿が好きねぇ★」
 「……い、いえ……す、好きというわけで……あひゃひゃひぁぁぁああああああああっ!!!?」
 かなり不穏な雰囲気が漂うが展開であるが今日も今日とてヱリカはコーネリアとガードル‐ドに連れられ祭具殿逝きとなる、そして本日は足の裏と脇の下くすぐり24時間というとてもソフトな罰だった……。

 「どこがですかぁぁあああああっ!!!……ってかシリアス展開の時くらい祭具殿オチやめろやこのアホ文士がぁぁぁああああああああああああっっっ!!!!」