うみねこのなく頃にEpisodeEX-Grief of goldenwitch-Tea Party-

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「・・・これで、私から話す黄金の魔女の嘆きは終わりです。」

八城宅でずっと話をしていた少女がようやく口をつぐんだ
それが終わると聞き込んで目を閉じていた幾子の目が開かれる。

幾子「なるほど。黄金の魔女は愛する人を失ったからこその嘆き、ですか」
「ええ、人は愛を与えたモノが失われたり、裏切ったりした時に嘆く生き物ですから」
幾子「時間にして2時間・・・と言ったところですね。まだ聞きたいとも思いますが、そろそろ私にも次の用事があります。
貴重な話を聞かせてくれて嬉しかったですよ。」
「いいえ、先生に喜んでいただけるのなら光栄ですとも。それに、私ももうすぐ行かねばならないところがありますので」
幾子「そうだったのですか?ちなみにどちらか聞いても?」
「・・・・時城市にですわ」

ニヤリと少女が不適に微笑む。幾子はそうですか、と言った後に玄関まで少女を見送ることにした。
二人は玄関で再び顔を合わせる。

「本日は貴重なお時間を頂き、ありがとうございました」
幾子「いいえ、こちらこそ。久方ぶりに楽しめましたよ。・・・ところで」
「まだ何か?」
幾子「時渡しの魔女は、貴女の写し身でよかったかしら?」
「・・・それは先生のご想像にお任せいたしますとも。それでは、ごきげんよう」
幾子「ええ、ごきげんよう。」

少女が去ってから幾子は玄関のドアを閉めた。

チリン

その背後に何時の間にいたのか黒猫が座っていた。

幾子「・・・そんなところにいたのか、我が巫女よ」

黒猫はすぐさま人の形・・・ベルンカステルになると不服そうな表情をしていた
隣にいるのは幾子ではなく、フェザリーヌ

ベルン「結局、最後まであのセイントとかいうバケモノに踊らされていたのね」
フェザ「クスクス、踊らされているそなたを観劇するのもなかなか面白くはあったがな」
ベルン「チッ、なんとでも言いなさいよ。・・・あと、一つ聞くけど、ヱリカを隠したのはアンタ?」
フェザ「いいや、私ではない。となればセイント卿だけであろうな。どちらかのかは知らぬが」
ベルン「舐めた真似してくれるわね、あの耄碌ババァ・・・あと、何ですって、時城市に行くって言ったわよね」
フェザ「今度こそ、本物の可能性の魔女を手に入れる気であろう。恐ろしい恐ろしい。クックック」
ベルン「・・・それを観劇しようとか思うアンタもアンタだけどね

ベルンカステルは呆れたようにため息をついた。
座っていた椅子から降りるとその場から離れようと歩き始める。
フェザ「おや、何処へ行くのか?我が巫女よ」
ベルン「・・・そのカケラを観劇しに行きたいんでしょ?なら巫女の私が探してくるわよ」
フェザ「クスクス。それは実に助かるモノだ、その間にラムダ卿のことは私に任せよ」
ベルン「あの子なら怪我に包帯つけたらどこかに行ったわ。」
フェザ「ほぅ、愛弟子に警告でもしにいったか」
ベルン「さぁね。そこのところまではわからないわよ。」

そう告げると今度こそベルンカステルは闇に消えて行った

<hr>

シュリはカケラの海の上に立っていた。
三人の魔女はあの直後に凄まじい突風によって吹き飛ばされていたのだった

朱裡「・・・ありがとう、シュリ」
シュリ「別に、アンタのために出てきたんじゃないったら」

プイッとそっぽを向く彼女に苦笑しながらそれでも彼女は続ける

朱裡「でも、ありがとう。」
シュリ「・・・それでも、私は助けられなかったわ」

手に持っている槍の柄を痛いほど握り締める。

朱裡「・・・いいのよ。スザクさんのことは、私が生還して、事情の説明ができたなら彼はそんなことにならなかったはずだもの」
シュリ「そうね、悔やんでも過去は変えられない。それがなんであったとしても」
朱裡「だから私、いえこのカケラの私は願うわ。本当のカケラで私と朱雀さんが幸せになれることを」

惨劇の起きるカケラでは幸せになれない自分をせめても生まれたカケラでは幸せを願う
だが、それに魔女は曖昧に微笑むだけであった。

シュリ「そう・・・ね。なれると、いいわね・・・」
朱裡「シュリ・・・?」

少しの不安を思った彼女は魔女に問いかけようとしたが背後からの声に気がつく

理御「お二人とも!無事で・・・・」
朱裡「理御さん。はい、おかげさまでなんとか事なきを終えました」
理御「そ、そうでしたか・・・・」
シュリ「どうかしたの?右代宮理御」
理御「それが・・ウィルとドラノールさんが・・・」

シュリ「そう、2人が怪我を・・・」
理御「はい、ゲーム盤を正常に戻す為にヱリカさんを迎えに行ったのですが」
朱裡「ヱリカさんを浚われて、かつ怪我をした・・・と?」
理御「はい、私はそれをヒト伝えに聞いただけですが」
シュリ「実に面倒な自体になったわね」
朱裡「・・・どういうこと?」
シュリ「今は違うけれど、朱裡。アンタはあのゲーム盤に並べられた駒の一つなのよ。それを正常な状態で終わらせない限り、アンタはあのゲーム盤から降りられない」
理御「そ、それは・・・・つまり・・・」
シュリ「古戸ヱリカの原型がない限りはゲームを巻き戻して私達の勝利条件であった【事件を起させない】ルートを回らない限り、朱裡を元の世界に返せないのよ」
朱裡「そ、そんな・・・・」
シュリ「とにかく、古戸ヱリカを探さないとなんともならないわ」
セイント「それには及びません」

三人の目の前に現れるセイント(白)。やや疲れた表情をしつつも気力で微笑んでいるような姿にその場は静まり返った。
シュリ「随分やつれたみたいだけど・・・大丈夫?」
セイント「ありがとう。全快とは言いがたいですがそれ以外は問題ありません
それより、ごめんなさい。貴方達をこのようなことに巻き込んでしまって」
シュリ「べっつに〜。退屈はせずに済んだわよね、一悶着はあったけど
で、古戸ヱリカは何処に?」
セイント「・・・私の片割れが時城市に連れていったようです」
朱裡「時・・・城市?」
シュリ「アンタは知らないのよね。この【うみねこ】のカケラをベースに別に創られている別のカケラ
そこには【時間泥棒の魔女】って総称されてる魔女が管轄し、住んでいる場所よ」
朱裡「・・・・?よくわからないわ。ごめんなさい」
理御「だ、大丈夫ですよ。カケラの概念というのは私もよくわかりませんし」
セイント「・・・おそらく私の片割れはそこで可能性の魔女をおびき寄せるための罠を張るために」
シュリ「まだ根に持ってるのね。あのババァ・・・しつこいわ」

ハァ、とため息をつくシュリ、それに苦笑するセイント

セイント「一度受けた屈辱は何千年も忘れませんからね」
シュリ「忘れときなさいよ・・・頭痛い。でも、時間泥棒の魔女様達がいるんなら問題ないでしょ?」
セイント「・・・いえ、そこは狡猾な私のこと。あらゆる手段を用いてでも進入すると思われます」
シュリ「なんで思われるって予測形なの?」
セイント「彼女は私が使った魔法で半分以上の魔力を失っています。それでは例え正面から時城市に入ろうとしてもすぐに追い出されてしまうでしょう。
ですが、私との戦闘後に彼女は残った魔力をカケラとして散り散りになったのです」
シュリ「・・・は?ば、馬鹿言わないでよ。アイツならさっき私のところに・・・」
セイント「おそらくソレは彼女のカケラの一つでしかありません。」
シュリ「どんなバケモノよ、それ・・・」
セイント「それだけではありません。厄介なことに彼女の魔力の源はニンゲンの妬みや恨み、主に心に巣食う闇の部分を吸い上げるのです。」
シュリ「吸い上げられるとどうなるの?」
セイント「ニンゲンは心のバランスを崩して良くて寝たきりに。悪ければ・・・そのまま魂が消滅してしまい永遠に目覚めることのない身体になってしまうと思われます。」
シュリ「・・・そこまでして何がしたいかわかる?」
セイント「あくまで彼女の目的は【可能性の魔女】ですが彼女をおびき寄せるためには彼女の弟子でもある【時消の魔女】を優先的に陥落させるでしょう」
シュリ「あのババァの考えそうな最悪の手ね。・・・でも生憎私はここから動けないわよ?だって朱裡の面倒もあるし」
朱裡「め、面倒ってなんですか・・・!!」
セイント「・・・そうですね。それであれば、貴女の家具をお借りしましょう」
シュリ「それでいいの?っていうか誰でいい?」
セイント「もちろん、シエスタ332をお願いします」
シュリ「・・・なるほど。たしかにうってつけってことか。シエスタ332」
332「ほいな。・・・ってまぁ、ややこしいことになっとるみたいやな、マスター」
シュリ「それは言わないの。・・・だいたいは把握できるかしら?」
332「マスターの無茶振りもええとこやけどなぁ。ま、とりあえずマスターの分身護ったらええんやろ?」
シュリ「必要以上にベタベタしないこと」
332「なんや、マスター。焼きもちかいな」
シュリ「ちっがーう!!アンタの女癖酷いの!っていうかこの世界に来たらあらゆる女にベタベタして・・・」
朱裡「そうなんですか!?朱雀さんっ!?」
332「ちょ、それは誤解や、俺はただ挨拶まわっとっただけで・・・」
シュリ「古典的なナンパ口調が挨拶代わりなわけないでしょ!!?」

ギャーギャーと煩くなった三人にセイントと理御は呆れるしかなかった。
ふと思い出したようにセイントは理御を見て

セイント「理御さん。貴方はウィラードさんのところに行きますか?」
理御「えっ?あの・・・それは」
セイント「心配なら傍にいてあげてください。それに、あそこならきっと貴方のことも護ってくれるはずです」
理御「で・・・ですが」
セイント「ああ、案内ですね。では先に行きましょう」
理御「ええっ!?あの・・・ちょっ」

ぐいぐいと腕を引っ張られ焦る理御
それとは別に背後から焦る声が聞える

シュリ「ちょっ、待ちなさいよ!!私達はこれからどうすればいいわけ!?」
セイント「それについてはまた後ほどこちらに戻り次第説明しますよ〜」
332「ちょ、マスター。お願いやから助けて・・・」
朱裡「白状しないとウサ耳もっと引っ張りますよ!!」
シュリ「いい気味なのよ。千切れない程度に引っ張っちゃいなさい!」
332「ノォォォォォ!!」

<お茶会 END>


うみねこのなく頃にEpisodeEX-Grief of goldenwitch-Back tea party

時間管理局、いつもはそこに働く職員達が昼休みに出ている時間
しかし、今日は全体的に静かであった。全員、中にはもちろん「いる」
だが、静まり返った局内で全員が「眠ってしまう」という異常事態になっていたのだった。
その異常さはこの場所に呼ばれた二人の魔女を戦慄させるのに充分だった
時消の魔女、離操 刻夢と時間泥棒の魔女エターナの姉妹。
数時間前に結社の長、偽神の魔女リリーに呼ばれて来たと思えばこの有様だったというわけだ

リム「何が・・・一体どうなっているの?」
エターナ「皆、眠っちゃってる。どうしてなのかな。さっき、リリーの通信の時はこんなに静かじゃなかったのに」
リム「そう、ね。お姉ちゃん、誰もかれもが眠っているなんて・・・」
エターナ「とにかく、行こう。リム、リリーが心配だよ」

2人で結社の中を歩く、しかしリリーの執務室までははっきりいって2人で初めてなのだ。
いつもは案内役の一人ぐらいはいるから迷うことはない
だが、今日に限ってそうなのだから仕方ないことなのだ。

ようやく歩き回って見慣れたドアの前に立つ。

エターナ「リム・・・おかしいよ。ここだけ」

その向こうにはリリーがいるはずなのに、それとは違う別の気配を感じて身震いするエターナ
だが、リリーの気配ももう一つの気配も微動だにしない。
待ち構えているかのように

リム「で、でも・・・開けなくっちゃ。リリーさんがきっと待ってる」
エターナ「・・・う、うん」

ガチャッ

扉を開けると中には自分の机に座っているリリーがいる
それにほっとした2人だったが、いきなり気味の悪い気配を感じ、驚いてその場所をみると全身を黒いフードで覆われている人物がそこにはいた。

リリー「2人とも、こちらにきてください」

やや緊張した声で自分の傍に来るようにというリリー、それに対してリムもエターナも反論せずに静かにその近くまで歩み寄った

「・・・これで、御そろいですね。時間泥棒の魔女様方」

黒フードが口を開いた、声は女のモノであった。

リム「だ、誰・・・ですか。貴女は」

「・・・・私は【執行者】。数多あるカケラの世界の一つにおける違反者を狩るモノ」

リリー「そのカケラは・・・・この世界を創っている【作者】のことですね」

「以下にも。【作者】が本当の意味で所持するカケラのことを指します」

エターナ「ど、どうして皆を眠らせちゃったのよ!」

「私がこの世界に顕現するには人の夢を渡り、具現化するしかないのです。もしくは貴女方に顕現の許可をいただくしか
ですから、失礼を承知でこのような強行に出てしまったことをご理解いただきたく存じます」

リリー「それほどまでに、我々にせねばならないことがある、と?」

「ええ、直端投入に言いましょう。この世界は、既に狙われています」

リム「だ、誰にですか!?」

「セイント・ジョスール・メインデント。その片割れに、です。
今からその恐るべき計画の一端をお話しましょう、そしてこれからどうするべきかも話し合う必要があるのです」



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