この物語はうみねこのなく頃に散 EP7のネタバレも含まれております。
ネタバレ対応期間が終わるまでは反転として記載させていただきますので、ご了承ください
また、この物語は私のオリキャラが主役ですので、苦手な方もご注意ください。


数多あるカケラの一つ、六軒島へようこそ
小さな黄金の魔女共々、皆様には最期のゲームを楽しんでいただきたく存じます
ゲームマスターは漆黒の髪の魔女、このゲームの勝者は果たしてどちらになるのか

難易度はもはや計測不能、挑む、というよりもこの物語を最期まで観劇いただけるだけで私は満足です。


うみねこのなく頃にEpisodeEX-Grief of goldenwitch- T

【新しき客人】
誰かが呼ぶ、遠くで・・・近くで・・・

???「・・・お、・・・り、お・・・・りおん。」
理御「う・・・・」
ウィル「やっと気が付いたか、理御」
理御「う・・ウィル?ここは・・・どこですか?」
ウィル「知っていたら俺も警戒はしてない。」
理御「どういうことですか・・・?」
ウィル「難しく考えるな。頭痛にならァ」
理御「私達は・・・ベルンカステルさんに追い込まれたはずで・・・」
ウィル「ああ、だがそこからは一切記憶がない」
理御「・・・そう、ですよね」

すると二人がいた白く塗りつぶされたような空間だった場所は突如として白い薔薇の咲き誇る美しい庭園と化した

理御「な・・・なんですか。これは・・・」
ウィル「どうやら、俺達は別の魔女に呼ばれたらしい」
理御「別の魔女・・・・?」
ウィル「ああ・・・。いるならさっさと出て来い、この庭園の魔女。こちとら手負いでも充分戦えるんだぞ!?」

失った右腕ではなく左手で黒刀を構えるウィル、理御もまた警戒してその背後にそっと身を隠す。

???「ようこそ、我が領域へ」

そう声が聞こえると白い薔薇の花びらが一斉に空中へ舞い上がりその乱舞の後に人影が現れる。
白い肌に純白のドレス。風になびくは白銀の腰まであろう長髪、緑色の瞳
そして・・・・手に持つは白銀の杖。その先にある紋章は双頭の鴉

ウィル「アンタが俺達をここに呼んだんだな。・・・単刀直入に聞く、目的はなんだ」
???「そこまで警戒しないでいただきたいですわ、ウィラード・H・ライト、それに右代宮理御さん」
理御「わ、私のことを何故・・・?」
???「私もまた、カケラを傍観することのできる魔女だからです。それよりもアナタ達にお願いがあります」
ウィル「悪いが、ソイツは無理だ。なにしろ俺達はベルンカステルに狙われている」
???「それでしたらご心配なく、ずっとは流石に無理ですが私との契約中は私の名の下にあなた方を保護する役目を担いましょう」
理御「そ、そんなことが・・・・可能なのですか?」
???「ええ、必ず約束いたしましょう。ウィラード卿はいかがでしょうか?」
ウィル「・・・理御、どうしても。この保護下に入りたいか」
理御「え・・・ええ、一時的にでもベルンカステルさんの魔の手から逃れる方法があるのならば」
ウィル「ということだそうだ。俺は理御を守ると約束した、そして今の俺にとって理御の言葉は絶対だ。その契約を受けさせてもらおう」
???「ありがとうございます。では先にウィラード卿の手当てを行いましょう。
【さぁさ、私の可愛い子供達よ。アナタの姿を私に見せておくれ、そしてその結晶を私に与えておくれ】」

シャラン

その魔女が歌うように白銀の杖を振るうとキラキラと輝く粉が舞うように踊る

???「【アナタは不可視な時間(トキ)。その時間を形にあるべきものを元に戻しておくれ】」

サァァァ

その粉はやがてウィルの失った腕に集まると、元通りのように治った

理御「すご・・・い。」
???「私にできるのはここまでです。早速アナタ達を契約の場所までお連れいたしましょう」
ウィル「・・・それより、アンタ。名前は?」
???「私の名前は・・・・」



【シュリと朱裡】
―六軒島、当主の書斎―

ガタガタ、ガタン

がさごそと三つの影があらゆる本を探し出している

そしてその三つの影を扉から見守る存在が一つ・・・・

バトラ「何をしてるんだ?ベアト」
ベアト「ひぅっ!?ば、戦人さん・・・申し訳ありません。どうしても使いたいと仰られてお客様を書斎に」

見守っていた人物、ベアトリーチェは突然現れた戦人に驚きながらしどろもどろに状況を説明する

バトラ「誰だ?・・・客って」
ベアト「シュリ・ベアトリーチェさんとその眷属お二人です」
バトラ「あー、なるほど。・・・事情はワルギリアから聞いてる。そしてこれは俺達が簡単に手を出せる物じゃないらしい。しばらくはそっとしておこう」
ベアト「で、でも・・・」
バトラ「ロノウェがクッキー作ったらしいぜ、一緒に行こう」
ベアト「は、はいっ。戦人さんがそうおっしゃるのなら」

そうしてそのカケラの領主達はその場を離れた

319「・・・マスター、バトラ卿とベアトリーチェ卿はこちらをお離れに・・・」
シュリ「いいわ、ほっておきなさい。それより・・・なんでこんなにも本があるのー!!」
332「六軒島の当主の書斎ですかんね、そら多くの魔道書、魔術書もありますわ」
シュリ「くっそー、あのババァ。人に召還者を指定しておいて召還方法は自分で調べろなんて」
319「マスターには創造での召還は可能でありますが、あるべきものを呼び寄せる術をお持ちでありませんから、仕方の無いことかと」
332「それに、異界召還は現在のマスターでもおそらく難しいものではなかと俺らは思うんですが」
シュリ「・・・けど、私にはこのゲームを負けるわけにはいかないわ。だからあの子の力を借りるしかない」

そういう間にも探す手を止めないシュリ
そしてもう一つ本棚から本を取り出そうとした時、彼女の手が一瞬止まる

319「・・・マスター?」
シュリ「見つけたわ・・・」

そう言ってシュリはその本を手に取った

シュリ「これなら・・・呼び出せる」

319と332の二人はなんのことかわからず首を傾げる
そんな二人におかまいなしにシュリは乗っていた脚立から降りて片翼の鷲の杖を一振りする
するとそこはたちまちに礼拝堂の中へと変貌する

332「マスターってあんなことできたっけか?」

こっそりと332が319に耳打ちをする

319「この間の一件よりマスターの魔力値は大幅にアップしている、その影響だろう
それよりも今俺達がやらなければいけないことは、マスターを見守るだけだ」

二人の眷属が見守る中、シュリは片手に持った本ともう片手の杖を高々と上げる
なんらかの呪のようであるが眷属の二人にはそれがなんの言葉を意味するのか理解できていなかった
そして次の瞬間、黄金の蝶が爆発したように乱舞を始め、強い魔力が礼拝堂を包み込む

シュリ「さぁ、おいでなさい。我が半身にして最初のモノ。そなたの名は・・・加宮朱裡!!」

その言葉に黄金の蝶は呼応するかのように一つに固まり、やがて礼拝堂の天井から球体のようなものが落ちてくる。
球体は花のように開くとそこから一人の女性が現れる。
黒いショートカットの髪、小麦色の肌、そして茶色の女性モノのスーツ
胸元には片翼・・・ではなく双頭の鴉のピンバッチがついている

シュリ「・・・久しぶりね、しゅ・・・」

シュリが半身に話しかける其の前に本人は彼女の脇を通り抜け、背後の332に抱きついていた

朱裡「朱雀さんっ!!」
332「うわわわっ」

ドッターン

完全に無防備だった332はそのまま転倒する形になる

朱裡「きゃああっ、ごめんなさい。そんな、わざとじゃ・・・。って・・・なんですか?この耳・・・」

332から生えているウサギ耳を不審に思ったのかそれをぎゅっと掴む朱裡

332「ぎゃああっ、痛い、痛いっ」
朱裡 「へっ?」

完全にカチューシャのようなものであると思っていたらしく突然のことに面食らう朱裡
その様子にシュリはため息をつきながら彼女に近づく

シュリ「彼は貴女の知ってる人物じゃないわ、私の眷属よ」
朱裡 「シュリ・・・ま、また貴女なのね!?私の仲間をおかしくしたのは!!?」
シュリ「はぁ?何言ってるの、だから彼は・・・」
朱裡 「いいえ、絶対貴女がおかしくしたんだわっ。ああ、可愛そうな朱雀さん・・・」

さめざめと泣く朱裡にさらにため息を深くつくシュリ
そして、すっかり朱裡に怯えて319の後ろにしがみつく332
すると、黄金の蝶と共にピンクのドレスに身を包んだ少女、ラムダデルタが姿を現した

ラムダ「あら、召還は上手くいったみたいね」
シュリ「ごきげんよう、ラムダデルタ卿」
ラムダ「クスクス、堅苦しいのはいいわ。それより、そっちがアンタの本体なのね」

ラムダの視線は朱裡に向けられ
当の本人は困惑したような表情でラムダを見る

ラムダ「初めましてね、加宮朱裡。私は絶対の魔女、ラムダデルタ。そこにいるシュリ・ベアトリーチェの後見人よ」
朱裡「この子の・・・?ならアナタも私の世界を・・・!!」
ラムダ「そこまで敵意を向けられても困るわ。だって私はアンタの世界になんて興味はこれっぽっちもないもの」
シュリ「そうよぅ、朱裡。ラムダデルタ卿は私達に力を貸してくださる方だもの。邪険にするのは間違っているわ」
朱裡「シュリは黙ってて!!よくも・・・私の仲間を、かけがいのない人の命で遊んでくれてるわね!!」
ラムダ「・・・・少しは黙りなさい。ニンゲン」

ラムダの一言でその場の空気がひやりと凍る

ラムダ「シュリ、ゲームが始まるまでにそこのニンゲンにこのゲームの意義とかをよく教え込んでおきなさい」
シュリ「は、はい。畏まりました・・・大ラムダデルタ卿」

ラムダデルタの姿が消えると凍っていた空気に温かみが戻ってくる
ほっと息をつくシュリと近衛兵達に呆然としたままの朱裡

シュリ「ゲームが開始されるまでまだ半日ある、朱裡。それまでにアナタにこの世界のルールや説明をしなきゃいけない
・・・其の役目はシエスタ321が行うわ。そして、ゲーム終了までアナタのサポートつく、それでいいわね?」
朱裡「・・・わかっ、たわ」

そうして客人でありゲームの駒である加宮朱裡もまた、ゲーム盤に配置されることとなった。
部屋を割り当てられた朱裡はシエスタ321と共に半日を過ごすことになった
そして、今回のゲームの経緯やルールなどを一通り習うことになったのである

321「・・・では、ここまでで質問はありますか?」
朱裡「いいえ、別に・・・」
321「かしこまりました、では私はこれにて・・・」
朱裡「ちょっ、ちょっと待ちなさい!私のサポートにつくんじゃなかったの!?」
321「たしかにマスターからはサポートにつけとのご命令は出ております
しかし、残念ながら今回のゲームマスター、ベルンカステル卿のご意思によってゲーム盤の外側からのサポートしかできません」
朱裡「ゲーム盤の外って・・・まさか」
321「はい、アナタ様は我が主、シュリ・ベアトリーチェ様の駒として盤上に立つことが義務なのです」
朱裡「・・・・そう、わかったわ。この私にあの血生臭い盤上に立てっていうのね」
321「そういうことになります・・・非常に心苦しいのですが、よろしくお願い申し上げます」
朱裡「どうして、私が呼ばれてゲーム盤にいる必要があるのか、聞いても・・・?」
321「それは・・・マスターの命令で言えません。ですが、このゲームは一度きり、それ以降はアナタ様を元のカケラに戻すことは約束されています」
朱裡「でも、それは私を元のカケラに戻すだけであって、そちらのゲームのことは約束されていない」
321「それは・・・申し訳ありません。私からはどうとも申し上げることが」
朱裡「いえ、こちらこそごめんなさい。私もアナタを困らせたい訳ではなかったのに・・・」
321「お役目ですから、しょうがないです」

自嘲気味に苦笑する321に朱裡は更に表情を曇らせる

朱裡「本当に・・・ごめんなさいね」



其の頃、シュリの姿は先ほどの礼拝堂にあった
そしてその前にはセイントの姿と二つの影が・・・

シュリ「よくも、やってくれたわね!!耄碌ババァ・・・」
セイント「クックククッ。誰が近衛兵はそなただけのモノであると宣言したのか
よって、このゲームにはこの二体を私の側近として置こうぞ。いいな。シエスタ207、シエスタ946!」
946「まさか、シュリ卿を傍観する側で召還されるとは思いませんでしたわ。ですが楽しみにさせていただければなんでもご命令くださいませ。我が召還主、セイント卿」
207「・・・召還主が違うのであれど、俺はその命に従うしかない。なんなりとご命令を、セイント卿」
セイント「ではこの茶葉が私を楽しませられない時は、その場で射殺してよい。無論、そなたの死はもう一人の死と同じであることを、忘れるでないぞ?くっひひひひひ」

セイントはケタケタと愉快そうに笑いながらその場を去っていく、続いてそのセイントに召還された207と946もまた姿を一時的に消した。
残されたシュリはギリッと歯噛みをしながら両手を握り締めていた。

シュリ「あんの馬鹿家具ッ・・・!!」
319「お呼びですか、マスター」
453「・・・俺も呼ばれたのはどういう事柄ですか」
シュリ「319、453。アンタ達にはこのゲームの間中私の護衛を命じるわ。453はバリアーで私を守って、319は207の攻撃を弾き返すのよ。」

そう聞くと453は畏まるように礼をするが319は珍しく複雑そうな表情を浮かべる。

319「マスター、残念ですが俺には207の攻撃を受け流すことは・・・」
シュリ「何も207に対して攻撃を弾き返せとは言ってないわ、だけどその黄金弓の軌道を変えるぐらいはできるでしょう?それに・・・アンタと207は敵対してもできないものね」
319「はい、申し訳ありません。マスター・・・」
シュリ「いいわよ、それぐらい理解(わか)ってるもの。さて、ゲーム開始までは・・・後1時間近く、ね」



【ゲーム盤の準備と開始】
セイント「どうであるか?ベルンカステル卿。こちらのゲーム盤の準備は」
ベルン「クスクス、順調よ。今回のゲームでは全くと言っていいほど暴れることができなかった。その代わりとして思いっきり潰してあげるわ。それで問題ないのよねぇ・・・?」
セイント「無論、私はそのつもりで観劇させてほしいと思っている。
・・・フェザリーヌ卿に観劇していただけないのが残念であるほどだがな」
ベルン「あのバケモノに見せるぐらいなら私はこのゲーム降りるわよ。肉を引き裂く快楽は私一人だけが楽しめればいいの」
セイント「クスクス・・・。では楽しみにしておるぞ。そして、例の駒は用意できているのであろうな?」
ベルン「ええ、できてるわよ。でもなんであんなモノがわざわざ必要なのかしら」
セイント「・・・そこを考えることができていないのであれば、そなたはまだまだ魔女の若造ということよ
ニンゲンはあの手に弱いことは・・・理解できるであろう?」
ベルン「・・・・そういうこと、いいわ。ならこのゲームマスターとして宣言する!
集いなさい。このゲームの参加者達!!」

ベルンカステルがそう呼ぶとシュリと319、453、321が姿を現す。

シュリ「準備は整ったようですね。ベルンカステル卿」
ベルン「そうよ、肉を裂きハラワタを引きずり出すのは私の得意とするところ
今回は趣向は違えどあんたの中身までバラバラに引き裂いてやるわ、無論アンタの相方もろともね」
シュリ「そうさせない程度に邪魔はさせていただきますのでお覚悟を。・・・では、最初に六軒島に朱裡を呼ぶ場面から」
ベルン「待ちなさい。まだこちら側の最終的な準備が整っていないわ」
シュリ「・・・どういう意味でしょう?」
ベルン「私は今回あくまでゲームマスターとしてゲームの進行を勤めるだけ。本当の対戦相手は別に用意してあるわ」
シュリ「・・・宣言した以上。早くその相手を会わせていただきたいものですが」

其の言葉を待っていたというようにベルンカステルの表情が邪悪な笑みに彩られていく

ベルン「では紹介してあげるわ。アンタの対戦相手は、コレよ」

パチン

ベルンカステルが指を鳴らすと黄金の蝶と共に玉座のような椅子に座っている人影が姿を現す

321「な・・・なんてこと・・・」
319「これは、酷いな・・・・」
453「そこまでして我々に勝ちを譲らないつもりか・・・」

近衛兵が口々にベルンカステルに対して悪態をつく、シュリさえも先ほどの余裕の笑みすら見せずに唇をかみ締めるだけであった

シュリ「・・・外道、ですね」
ベルン「クスクスクス・・・・何とでも言えばいいわ。アンタの相手は、この古戸ヱリカよ。」