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ベアトリーチェの庭園物語 新天地でもいつもと同じだね〜編


 青空が広がり相変わらずポカポカ陽気のベアトリーチェの庭園では主であるベアト達魔女がのんびりとお茶会の最中だった。
 「……ふむ、無事に引っ越しも完了したな?」
 「……いや、引っ越しってあんた……別にあたし達がどうこうってわけじゃないでしょう?」
 これもまた相も変わらずと言うべきかベアトと戦人の間に座るエンジェがジト目で突っ込む。
 「そう言うでないわ、外の人の都合と言うものよ」
 「……中の人じゃなくて外の人かよ……」
 戦人が呆れた顔で言い、ワルギリアもまた苦笑を浮かべている。
 「……しかしエンジェよ、せっかく新天地に来たのであるからお主をブラコンを卒業し妾と戦人の事をだな……」
 「絶対に認めないわよっ!!!!」
 鬼の様な顔で言うエンジェにベアトはやれやれという風に溜息を吐く、そして当の戦人は言うとキョトンとした顔でそっとワルギリアに聞いた。
 「……なあ、いつも思うがエンジェは何でああも俺とベアトの事でムキになるんだ? しかも俺とベアトの事って……?」
 「………………」
 新天地に来ても変わらない鈍感ぶりにワルギリアは言葉がない、戦人は女心と言うものをもっともっと勉強する必要があるとつくづく思い知らされる、しかしよくよく考えて見れば『本編のカケラ』での戦人とベアトは相思相愛死ぬときゃ一緒な程にラブラブでこのカケラの戦人もそれは知っている、にも関わらず『庭園物語のベアト』が自分に好意を持っているという発想がどうして浮かばないのだろうと不思議に思う。
 「……しかしもう十二月か、時の流れって奴は本当に早いもんだぜ」
 「……そうですね戦人君、私達の物語が完結してじきに一年になります……」
 本当にあっと言う間だったなと思うワルギリアはこの一年間を振り返ってみる、うみねこが完結してからもこの庭園はずいぶんとドタバタもしたが、それがこの庭園のカケラのいつもの日常とも言えると思うと少し可笑しい気持ちになる。
 「……ん? どうしたのだお師匠様?」
 「……え?……ああ、何でもありませんよベアト。 うふふふふふ……」


 ベアト邸の裏手は少々荒れていると言っていい、もちろんそれなりに手入れはされてはいるが滅多に人も来ないだけに表程ではない。 
 そんな裏庭をほふく前進で進み怪しげな蒼いツインテール少女こと古戸ヱリカとドラノール・A・ノックスの二人、その表情は不敵な笑みすら浮かべるヱリカとやれやれとでも言いたげに気乗りしないという風なドラノールとで対照的だった。
 「くっくっくっくっくっ! 新天地にやって来た記念にド派手に行って来いという我が主の指令、絶対に果たしてみせますわ!」
 「………………」
 そのベルンカステルの命令はドラノールには『ド派手に(ヱリカが)逝ってきなさい★』と聞えたのだが親友としてそれは言わないでおこうと思っている、それが優しさであろうと。
 「……このままこっそりと侵入して奇襲攻撃をかけて差し上げますわ、いいですわね?」
 「……セコイ作戦デス……ワタシはせめて正々堂々と挑むべきカト……」
 「シャラップ! 正々堂々戦っても勝てないから奇襲するんです、そんな事も分からないのですか?」
 「奇襲しても大抵はフルボッコにされた事しかない気がしマスガ?」
 「何を……ん?」
 その時カチッ!という音が聞こえた、そしてその数秒後……ド派手な爆発音と共に閃光がきらめきヱリカの身体を吹き飛ばしていた。
 「あききょぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!?」
 突然の爆風に数メートルほど転がされたドラノールだったがすぐに立ち上がり上空を仰ぎ見ると、そこにははるか上空にまで吹っ飛びキラリ☆とお星様になったヱリカ星があった。
 「……ま、いつもの事デス」
 

 ものすごい爆発音が聞こえたのでエンジェと戦人は何事かと驚くがベアトは落ち着いた顔で紅茶を啜る。
 「……心配ない、おそらく対ヱリカ用に仕掛けた地雷であろう。 こんな日にあやつ来ないはずはないからな」
 「……地雷ってお前……ヱリカ以外が引っかかったらどうする気だよ?」
 「そうよ、ヱリカは良いけど他の誰かが踏んだら危ないじゃない!」
 「……そうですねぇ……ヱリカはともかくとしても他の者には危険すぎますねベアト?」
 三人が口々にベアトの無謀を責めると彼女は「むぅ?」と唸った、手に入れた地雷を面白半分に仕掛けたのでそこまでは考えていなかったのである。 確かに裏庭など滅多に人が行く場所ではないが絶対に行かないという保証はない、とくにエターナを始めとした好奇心旺盛なちびっ子達はである。
 「……確かに妾が迂闊であったわ、反省しよう」
 あまりに素直に反省するベアトの他の三人は鳩が豆鉄砲を食らった様な顔をした、それを見たベアトはムッとした顔になる。
 「おい! 何故そこで驚いた顔をするのだ!?」
 「……あ…いや、あんたが素直に反省するってのがちょっとね……」
 「……ああ、俺もちょっと意外だなと……」
 「……ええ、あまりにも意外すぎて……隕石でも落ちてこなければいいですが……」
 素直に反省したのに言いたい放題言われたベアトは身体をワナワナと振わせ、そして大声で怒鳴った。
 「妾を何だと思っておるのだぁぁぁぁあああああああっっっおのれらわぁぁぁああああああああああああああああっっっ!!!!!」
 

 舗装もされていない田舎道をトッコットコと歩く姉妹+α。
 「もうちょっとだよ〜〜〜♪」
 「……ちょっ……そんな急がないでよお姉ちゃんっ!」
 良く似た顔立ちに銀髪という姿から姉妹であろうと思われる少女達がそんな会話をしている、しかし十八歳程度の見える少女がお姉ちゃんと呼んだ相手はどう見ても十歳前後である。
 「……この姉妹は本当に変わらんな、やれやれだ……」
 その少女達の後ろ姿を見つめながら保護者にも見える男が苦笑する、そして事情があって十年近くも離れ離れになっていたとは思えないほどの仲の良さに軽い嫉妬を怯える自分に少し驚く。
 「……刻夢の保護者であればいい……そのつもりでいたが結局はか……」
 この『庭園物語のカケラ』の自分――フェリオンも何だかんだで離操刻夢という少女に特別な感情を持ってしまったと言う事だろう。
 「……あの……」
 「……ん?」
 その時タンクトップに筋肉質な男がおそるおそるという風に声をかけてきた。
 「……失礼かもしれないが、いったい彼女は一人で何をしてるんです?」
 「……ん?……ああ…」
 ベアトの庭園にいると忘れがちだがお姉さんの方――エターナの姿は普通の人間には視えないから傍目には妹の――離操刻夢が一人で奇怪な行動をしてるようにしか見えないのだろう。
 フェリオンはどう誤魔化したものかと思案し、一番手っ取り早い方法をとる事にした。
 「…………うっ!?」
 目には見えない素早さで男の首筋に手刀を叩きこむと彼は小さくうめき声を上げてその場に崩れ落ちた。
 「悪く思うなよ? ま、首を掻き毟った死体で発見されないだけありがたく思うんだな富竹ジロウ……っと!」
 いつの間にか刻夢達はずっと先まで行ってしまっていた、慌てて追いかけるフェリオン。
 「……しかし、この雛見沢村にいるエターナの友達……あいつは謎のシュークリーム神とか言ってたが、やはり羽入だな」

 
 望んで手に入れたものでなくと力を手にした者には否応なしに責任が課せられる、そしてこれまた当人が望む望まないに限らず大きな災いを引きよせてしまう。
 永遠(とわ)の魔女エターナルにとってバアルはまさにその災いだった、魔界の一国を収める彼が野心のためにエターナルをスカウトしようと部下を使い接触してきたのだ。
 「……ま、そう簡単には諦めないか……わざわざありがとね、サイサリス」
 「……いえ、大したことではありませんから」
 魔女オーキッドの弟子にして血のつながらない娘でもある影の魔女サイサリスは淡々と言う、バアルがエターナルを狙っているという動きを知ったオーキッドはサイサリスに調査を命じそれをエターナルに知らせてくれたのだ。
 悪の魔女を自称する割には何かと庭園のメンバーを気にかけているのがこのカケラのオーキッドだ。
 「あなたに接触し倒されたヴァサーゴが何故死亡したのかは不明ですが……それでもバアルは諦めてはいません、それ程あなたの力を評価しているという事でしょうね」
 「はた迷惑な話だね……そんな言うほどにあたしは強くないのに……」
 「……謙遜ですね、あなたは我が師オーキッドお母様が目指す『神クラス』に到達しています……正直あなたにはどれほどの力が秘められているか私には窺い知れませんよ?」
 サイサリスの言葉には嫉妬や妬みといったものは感じられず、あくまで事実を淡々と語るという風だった、それがまた彼女らしいとエターナルは思う。
 「……そうだね、もしかしたらバアルも倒す事も出来るかも知れない……でも、そうしたって次が来るだけだよね?」
 「……力を見せつける程に更に災いを呼ぶ……しかしそれもあなたがバアルの後釜となればいい事です、シエスタ7914の様に……」
 フリーではなく一国の主ともなればおいそれと手出し出来るものではない、そこまでいかなくとも何らかの組織に所属し身を固めるだけでもずいぶん違うだろう、その意味では原因はエターナルがいつまでもふらふらしている事にないわけでもない。
 「あはははは……あたしは一国の女王ってがらじゃないよ?」
 自らの力を磨き強くなる事にも支配者となり権力を持つ事にも大して興味がない、それが悪いとは言わないがそこに自分の幸せがあるとはエターナルには思えない。
 大事な家族や友達の静かに日々を過ごす、それが彼女の考える幸せなのだ。
 

 「あきゃぁぁぁああああああああああっっっ!!?」
 「お師匠様っ!?」
 緑色をした肉食恐竜を想わせる巨体をしたモンスターの尻尾にリリーが弾き飛ばされ彼女の弟子である魔女シェリーが声を上げた。
 事象管理結社という御大層な名前とは裏腹にこの『庭園物語のカケラ』ではほとんど便利屋みたいな組織の幹部であるリリー達の今日の任務はある渓谷に出現した巨大モンスター『イビルジョー』を討伐せよというものだった、そしてたかがモンスター一匹とタカをくくったリリーは弟子のシェリーだけを連れて討伐に赴いたのである。
 「……くっ!……まだです、まだ終わらん……ぎゃっ!!?」
 巨体に似合わない速度と跳躍力を見せたイビルジョーがリリーに跳びかかってくるが彼女はそれをかろうじてかわし素早く態勢を立て直す。
 「まったく、だからもっと人数を集めようって言ったんですよ!」
 「し、しかしですね! たかがモンスターに物量戦なんて仮にも疑神の異名を持つ私の……!!?」
 次の瞬間に跳びかかって来たイビルジョーの前足にリリーは押し倒された、彼女は何とか振り払おうともがくが相手の質量が大きすぎる。
 「お師匠様!!!!」
 「下がってなさいシェリー!!」
 「……え?」
 突然の女の声にシェリーが驚いた瞬間に茶色い何かがイビルジョーに命中した、するとイビルジョーは不快とも思える様子でもがきリリーから離れた。
 「ん〜〜〜〜? 今回はねむり肉いらないかね?」
 「ですね、捕獲もなしで一気に討伐の方向で行きましょうカシンさん! アルさんもいいですね?」
 「了解っすショウガさん!」
 鎧を装備した男三人組が口々に叫ぶとイビルジョーに向かっていく、片手剣を持ったカシンが脚にガッツンガッツンと斬り込んで行きショウガとアルはそれぞれにライトボウガンと弓でイビルジョーの頭部やら胴体やらを撃つ。
 「……オーキッド!?……な、何なんですかいったい!?」
 突然やって来た三人組にもだが一番驚いたのはリリーを助けたのが彼女の宿敵である魔女オーキッドだった、目を見開き口をパクパクさせながら叫ぶリリーにオーキッドは淡々と言う。
 「……モンスターハンターのバイトよ、そして彼らはモンスター退治の専門家『うみねこカフェ・モンハン部』の皆さんよ?」
 その言葉とほぼ同時にズシンという音を響かせてイビルジョーの巨体が大地に倒れた、唖然とその光景を見つめるリリーとシェリー。
 「ん〜〜? 十分針かぁ……まあまあじゃね?」
 モンハン部のハンター達はカシンの言葉に頷き合うと倒したばかりのイビルジョーから剥ぎ取りを始める、リリーとシェリーはその光景を茫然と見つめているしかなかった。

小さなランプの明かりだけが照らす暗い部屋でお茶会中なのはベルンカステルとラムダデルタ、そしてフェザリーヌ・アウグストゥス・ギラドーガだった。
 「……って! 誰がネオ・ジオン軍の量産型モビルスーツかぁぁぁあああああああああああああっっっ!!!!」
 「……何を突然に叫んでいるのよアウアウ?」
 ベルンは憐れむような視線をフェザリーヌに向けると紅茶を一口啜った、その隣ではラムダがクスクスと笑っているのを見てむっとした顔をするフェザリーヌ。
 「何を笑っておるか! まったく……『−』しかあっておらんではないかこのアホ文士め!」
 そう毒づきながらも紅茶を口に含み気を落ち着かせる。
 「そう言えばベルン、今日はあの子がいないけど……?」
 「……ああ★ あの子なら今頃お花畑で……ねぇ★」
 そう言い「うふふふふ★」という黒い笑みを浮かべるベルンだった。


 ヱリカのいる祭具殿の部屋は密閉された空間であった、そこで彼女が倒れているのは窒息ではなくそこに植えられた植物の匂いによるものである。
 「……ぐ、ぐふ……もう…お許しを…………」
 部屋いっぱいに植えられたラフレシアいよる腐肉の様なにおいでヱリカは呼吸も満足に出来ず、ピクピクと身体を痙攣させ悶絶していた。
 「……謹んで申し上げる、このラフレシアのお花畑を堪能せよというのがベルンカステル卿の命令であると知り給え」
 淡々と言い放つコーネリアが平気なのは彼女が白いロンド・ベルのノーマルスーツを着込んでいるからだった、アムロ・レイというエースパイロットが着用していたものと同じデザインのこのノーマルスーツは宇宙空間での活動を前提としている完全気密な宇宙服でありラフレシアの匂いなど完全にシャットアウトしていた。
 「……ううう…ど、どうして…新天地……でまで……祭具殿…オチ……ガクッ……」
 そこで完全に力尽き動かなくなったヱリカを見降ろしながらコーネリアは何を今更とでも言いたげな感じで言ったのだった。
 「……謹んで申し上げる、このカケラの貴女は祭具殿オチしてナンボなキャラであると知り給え〜〜〜♪」
 薄れゆく意識の中でヱリカが最後に見たものはこれでもかというくらい爽やかなコーネリアの笑顔だったと言う……。