シュリ・ベアトリーチェの挨拶式伝3

注意:今回は、時間泥棒の魔女様方との会合です。

その日、シュリはいつもどおりに起床する、がふとした違和感に気付く

「・・・私、いつ寝たの?」

昨日はマリア卿やエンジェに挨拶したまでは覚えている、けどそこから部屋に戻って寝るまでの記憶がない

「シエ・・・・」
ふいにシエスタ332と319を呼ぼうとして再び違和感に襲われる
寝るときはあの二人に朝の命令をしてから寝るんじゃなかったっけ・・・それがないということは自身が何を言ったのかさえわからずにいて二人を呼び出しても意味はないのではないかと思う
でも考えているだけ無駄かとも思ってベッドから起き上がる、するとひらりと掛け布団から一枚の紙切れが落ちる
拾い上げるとそれは例によって双頭の鴉の封蝋が押されている封筒だった
気に食わないがそれを再び乱暴に開けて中身を取り出す。

『結社へ向かえ』

そうとだけ書かれたカードは一瞬にして燃えあがると一つの紹介状と変わった
『拝啓、偽神の魔女様。』
そうとだけ書かれたプレートは紙の材質ではなく、銀色に輝くものだった

「偽神・・・・?誰・・・」

そう呟くとそのプレート独りでに浮かび上がると眩いほどの光を放ち始める
「まぶしっ・・・・」

その光の洪水に巻き込まれるかのように一瞬にしてシュリの姿は、消えた


同時刻、マリアと紅茶を嗜んでいたベアトはふと空を仰ぐようにして視線を向けた

「うー、どうしたの?ベアト」
「いや、なんでもないぞ。マリア、それよりも昨日の七姉妹とのゲームの結果をもっと聞かせておくれ」
「うん!でね、ベルフェが・・・・」

表向きは全くいつもと変わらないお茶会の風景であった。

「・・・っ、何処、此処・・・」

シュリは気がつくと全く見知らぬ場所にいた
さっきまでベアトリーチェの作り出したカケラにいたはずが全く知らない場所に飛ばされてしまったらしい
その証拠に、目の前には大きな建物のようなものが・・・

「これは・・・ひょっとしてここが『結社』?」

手に持っていたカードを見る、しかしそれはもう先ほどのような魔力は放出せず、ただ銀色に鈍く光っているだけであった。
するとそんなシュリの周りをいつの間にか取り囲む黒い影達がいた。

「歓迎、ってわけじゃなさそうよね、かといって319や332だけじゃ火力不足そう・・・
さぁさ、お出でなさい。シエスタ近衛兵。453、321!!」


そう虚空に向かって叫ぶと黄金の蝶が乱舞して空中から二つの人影が現れる。
1人は少年のシエスタ、453。黒い髪、赤い瞳まではシエスタ近衛兵の共通、しかし服は319や332と同じ男性形態で深緑色であった
それとは別のシエスタ321、こちらは女性で腰まである黒い長髪に赤い瞳、服装は姉妹兵のと同じもので色は瑠璃に近い深みのある青色

「初めての時以来の顔合わせだけど、戦えるのか。私に見せてちょうだい。321、453」
「「かしこまりました。マスター・ベアトリーチェ」」

二人はシュリに向けて一礼をした後、黄金の矢を黒い影達ではなく空に向けて放った
すると一つであったその矢は無数の矢となりその囲んでいた黒い影達に向かって落ちてきたのであった

しかし、それは貫かれると霧散していなくなる。つまりはただの影でしかなかった

「影を操る魔法・・・・なるほど、面白い魔女がいるものね
そして、近くにいるのもわかっているわ、出てきなさいよ」

シュリの合図と共に453と321が矢を向けると空間が歪み、先ほどの黒い影のように黒いフードを被った女性が出てきた

シュリ「誰?アンタ・・・ベアトリーチェの関係者じゃないみたいだけど」

???「・・・私は、サイサリス。『影』の魔女」

シュリ「『影』の魔女?・・・やっぱり聞いたことないわね。ということは此処はベアトリーチェのカケラではないということ・・・?」

サイサリス「『結社』を侵す魔女を排除するのが、私の・・・仕事」

シュリ「はっ、偽神の魔女とやらに会いに来ただけだけ通してもらえないなら力づくで通るわよ!!319、332!」


黄金の蝶が乱舞すると319と332が現れた、ただしそれと同時に別の影も現れる

シュリ「えっ・・・?アンタ達・・・」

1人は白いドレスを主にした白銀の肩までの髪にライトグリーンの瞳の女性
もう1人は漆黒の肩までの髪に金色の瞳、藍色のパンツスーツに茶色の靴の女性

ティタニアス「『終焉の魔女』ティタニアス、ここに」
ヴィレイユ「『始業の魔女』ヴィレイユ、ここに」

サイサリス「『終焉』の魔女様、『始業』の魔女様。お待ちしておりました、どうぞ中へ」

シュリ「ちょ、ちょっと待ちなさいよぅ!!私は!!?」

ティタニアス「シュリちゃんはオイタするから放置ということであの方がお決めになったわぁ」
ヴィレイユ「ということで私たちが代理だそうだ、もっとも偽神の魔女のお方がお会いしたいというのであれば別だがな
サイサリス殿、では案内を頼む」
サイサリス「で、ですが・・・・」
ティタニアス「シュリちゃんは放置の方が堪えるからいいですのよ」
ヴィレイユ「むしろあのままの方が面白くてしょうがないのさ」
サイサリス「は、はい・・・かしこまりました」

そういって三人はそさくさと建物の中へと入っていってしまった

シュリ「っ〜〜〜〜〜」

残されたシュリはわなわなと身体を震わせている、どうにも怒りの頂点が収まらないようだ
ここでシエスタ近衛兵らに当たることもできるがそれを察知して四人は既に姿を消していた

シュリ「あの人の馬鹿ぁー!!!」

叫んだシュリの頭上に金タライが落ちてきたのは言うまでもなかった

一方、ヴィレイユとティタニアスは結社の中の応接室にいた

ティタニアス「本当にお久しぶり、いいえ。会うこと自体は初めまして、ですわね。
偽神の魔女、リリー様」

ニコニコと笑みを向けるティタニアスの目の前には同じく笑みを浮かべるリリーの姿
時間の魔女の原案の時点で消え去った魔女二人と召還された時間泥棒の魔女の1人、なんとも奇妙の組み合わせだ

リリー「本当に、初めましてのはずがとても懐かしいような。そんな気がしますね
それよりも先ほど結社の前で騒いでいた魔女ですが・・・」

ヴィレイユ「はい、彼女はシュリ・ベアトリーチェ。別のカケラにて碑文の謎を解いて魔女へと昇華した存在です。
本来は『自身が生み出された物語のベースのカケラ』であれば自由に行動できうる権限を持っています、が我が主の権限により
こちらのカケラ・・・『時間泥棒の魔女』のベースのカケラへと渡り歩くこともできるようになりました
ただし、こちらの滞在に関しましては三魔女、リリー様、リム様、エターナ様全員に一致での賛成をいただかねばなりません」

ティタニアス「本来はそれを彼女にやらせたかったのですが・・・どうにも彼女は我が主の意向に背いてしまうようで
ご迷惑をおかけしてしまったことをお詫び申し上げます」

リリー「元気がよいと言えばそうかもしれませんが・・・・少々若すぎるようですね
まだ航海の危険を分かっていない、危うい存在とは思うのですが、それについてはいかがなのでしょうか」

ヴィレイユ「それにつきましてはおそらく我が主から後ほど直接ご説明があるかと存じます」

ティタニアス「我々は彼女のクッション役となるように我が主の命でここに来た亡霊のようなものでしかありません
リリー様のご期待に沿えずにできなくて申し訳ありません」

リリー「・・・そうですか。
わかりました、説明があるのであれば私からは何とも申し上げられません、先にリムやエターナのところに行くといいでしょう、そう彼女にお伝えください」

ヴィレイユ「かしこまりました」
ティタニアス「我が主にもお伝えしておきます、それでは失礼いたします」

二人は一礼すると応接室から出て行った

リリー「我が主・・・ですか、アレは貴女の差し金で良いのですね?セイント卿」

リリーが問いかけると空いていた椅子にフッと姿を現す1人の魔女
魔女、それにしては姿も小さすぎる、5歳ぐらいの小さな容姿に不釣合いなほど長い白銀の髪、深い青色の目
彼女こそ、シュリをこの世界に連れて来た張本人、『時渡しの魔女』セイント

セイント「うむ、彼女らは既にマイスターの手の内どころじゃからの。私の手で弄ぶなど造作もないことじゃ」

にっこりと笑顔でとんでもないことを伝えるセイント
その屈指もない笑顔にため息をつくリリー

リリー「貴女が別の世界のカケラの住人でよかったですよ。でないとまた大変なことになりかねませんから・・・」

セイント「じゃが退屈が嫌いのは私もじゃて、しばらくはこっちの世界で遊びたいものであるがな」

そう言われてリリーはまた深いため息をついたのであった

続く