シュリ・ベアトリーチェの挨拶式伝

ある昼下がりのメタ世界の黄金郷付近
黄金の蝶が乱舞し、その傍らの納屋にはワルギリアとベアトリーチェの姿があった
私はそれを確認するとその近くにと姿を現した。

「・・・誰だ。そなたは」

不機嫌そうに呟くベアトリーチェにむけて一礼をする少女。

「ごきげんよう、マダム・ワルギリア。そして二代目様
私は数多あるカケラより参りました。シュリ・ベアトリーチェと申します。」
「ベアトリーチェ?そなたが?別のカケラで黄金の、いや碑文の謎を解いたというのか」
「はい、私はその時に絶対の魔女、ラムダデルタ卿に認められて魔女となったものです」

「まぁ、それは・・・なんという奇遇なのでしょう。また別のゲーム盤でも同じことがありましたね」
「たしかに、奇遇ではあるがまさか全く知らぬものが我が称号を受け継ごうとは。全く、カケラの海の無限さには驚かされるものだ」
「ええ、そうでしょうとも。私のカケラでは二代目様は命を懸けたゲームではなくただのお遊びのゲームとなっています。
無論、それに相応しいニンゲンどもが相手をしているのは間違いはないのですが」
「ほぅ、それもまた興味はある。しかし・・・その前に見せてもらおうか、そなたの魔力を」

ニタリとベアトの口が大きく三日月のように笑みの形を作る
それに対してシュリもピクリと眉を動かしてその挑発に応じるように顔を上げた

「・・・と、申しますと。どうすればいいのでしょうか」
「簡単なことよ、家具同士で戦わせればよい。それでもお主の力量を測れるということだ」
「かしこまりました。」
「では、妾から行こうか。さぁさお出でなさい。罪を許しなさい
煉獄の七姉妹!!」

ベアトリーチェが煙管を振るうと一斉に煉獄の七姉妹が姿を現す

「ベアト・・・これでは流石に相手にならないのではないですか?」
「そんなことはないであろう、お師匠様。仮にも黄金と無限の魔女を引き継いだと言うのだ、何を躊躇する必要があるのであろうか」
「それも・・・そうですが」
「ご心配には及びません」

凛と言い張るシュリ・ベアトリーチェ
その言葉に七姉妹の個々の顔が引きつる

「な、何よ、コイツ・・・」
「いくらなんでも調子に乗りすぎよ」
「そうよ、抉っただけじゃすまないわ。」
「ベアトリーチェの名を語るにはもう百年ほど早いだろうな」

口々に言い合う姉妹を他所にシュリは手に持っていた片翼の鷲の杖を振るう

「さぁさ、お出でなさい。私の呼びかけに答えなさい
シエスタ近衛兵!!」

その言葉にその場がざわついた

「シエスタ近衛兵・・・・とはなんじゃ?」
「わ、私にもよくわかりません・・・ですがシエスタの名を継ぐのであればかなりの破壊力を持つ、家具ではなくて武具」

固唾を呑んで全員が見守る中、黄金の蝶の乱舞の中より二つの影が舞い降りた

「・・・シエスタ319、ここに」
青みがかった黒い髪に不釣合いなウサギ耳、切れ目の細い目に紺色のシエスタ服。
しかしそれは姉妹兵のそれではなく、男性用・・いや、その武具自身も男性であった

「シエスタ332。ここに、やで」
もう一つの影もまた青みがかった黒い髪にウサギ耳、目は細く閉じられていてわからないがおそらく似たような風貌である
ただし、こちらは赤茶色のようなシエスタの服、彼もまた男性であった

「シエスタ近衛兵は、特別な武具です。攻撃力はオリジナルの姉妹兵ともかわらないでしょう」

たった二人だけなのにそれから発せられる異常な魔力は上級家具である七姉妹をも震え上がらせるには十分は存在であった

「・・・下がれ、七姉妹。」
ベアトリーチェは静かに告げる

「べ、ベアトリーチェ様!?」
「シエスタ姉妹兵に匹敵するのであればむざむざと家具を差し向けたくない。だから下がっていろ」
「くっ、かしこまりました。お前たち、下がるわよ」
「「「「「はぁい、おね・・・・」」」」」」
「見たいのであれば、見届けるのはかまわん」
下がろうとした七姉妹を引き止めるようにベアトリーチェの言葉が続いた
それにキョトンとしつつも、七姉妹はその場にとどまることにした

再びベアトリーチェは煙管を振るう
「さぁさ、お出でなさい。シエスタの記念姉妹兵よ!!」

黄金の蝶の乱舞と共に三つの影が現れる
「し、シエスタ45.ここに!」
「シエスタ410、ここにぃ」
「シエスタ00、ここにであります」

「オリジナルの姉妹兵ですか、二代目様。ですが近衛兵も力は同等と言いましたが?」
「ふん、そんなものはやってみないとわからんわ。」
「そうですか。では近衛兵、姉妹兵を蹴散らしてあげてください」

「「了解です。マスター・ベアトリーチェ」」

「姉妹兵らよ、標的はあのパチモノだ。思う存分に暴れてよいぞ」
「了解であります。データ受領開始」
「45了解、目標測定完了。410へデータリンク」
「410データ受領。目標への固定完了、着弾装備」

大きな黄金の弓が姉妹兵の手に出現する。
そして目の前の近衛兵らもまた大きな黄金に輝く弓を持っていた

「319、環境データおよび目標への距離計算終了。332へリンク」
「332、データ受領。射程距離および着弾装備を開始」

二つの弓に矢が装填される

「「発射(にぇ)」」


激しい地鳴りとともに二つの矢がぶつかり、消滅した

「・・・・流石に引き分けですね」
「その武具の存在に納得はいかぬが、仕方あるまい
姉妹兵、下がってよいぞ」
「かしこまりました。ベアトリーチェ卿」
「近衛兵、お疲れ様。下がっていいわ」
「「御衣、マスター・ベアトリーチェ」」

二つの嵐が去ると黄金郷は元の姿となり、黄金の蝶が乱舞する幻想世界となっていた

「しかし、ここまでとはな。新しきベアトリーチェ」
「そうでしょうか、しかし彼らとしてはまだ片鱗すらも見せていません
また機会があればお見せしたいものです。」
「くっくっく、それは難儀よの。今度ばかりはどうにもなりそうにないわ」
「そういう割には楽しいそうですね、お嬢様」
「数多のカケラより存在する駒は少ない。そなたも見学してみないか?
この世界を」
「もとより楽しむために来させていただいた身。最後までお付き合いいたしますわ
二代目様」




fin